この5日間でトータルして十数時間しか眠っていない。
ふらふらになりながら告別式にでる。
遺影の写真のおじいちゃんは、赤いタータンチェックのネクタイなんかしてとても元気そうで、あたしの記憶の中のおじいちゃんとほとんど変わらない。聞けばこの写真は今年の3月に米寿の記念に撮ったものだそうで、つい半年前までこんなにぴんぴんしてたのかと思うと、残念でしょうがない。
棺桶に花を入れる時、初めておじいちゃんの死に顔を見た。花がほんとに綺麗だった。棺桶に釘をさした。3回カンカンカンとたたいた。
密葬ということでほんとに身内だけで告別式が終わると、みんなで火葬場へ向った。火葬場はかなり新しくてモダンな建物で、一度に十体くらいは荼毘にふすことができるようになっている。それがまるでエレベーターホールみたいになっていて、棺桶がエレベーターの中にすうーっと入れられると、エレベーターの扉が閉まって肉体がこの世とお別れをする。あたしたちはそのエレベーターホールを見下ろすガラス張りの「お見送りホール」からその様子を眺めている。完璧に骨になるまで普通は90分くらいかかるらしい。けどおじいちゃんはもうずいぶんと小さくなっていたので1時間くらいでエレベーターから出てきた。あたしたちは用意されたお座敷でお酒を飲んだりおにぎりを食べたりしてその時を待っていた。骨は熱かった。あたしは叔父と二人でおじいちゃんの一番大きい骨を1本つまみあげて骨つぼに入れた。死んだらほんとに燃やされちゃうんだ。その時はほんとうに肉体が燃えて消えてしまったと感じた。これまで結構、魂とか霊とか精神とか信じてたけど、この時は全部ウソだと思えた。
火葬場から葬儀場に帰ってきて会食。夕方には解散した。帰りにお供物の果物が全員にわけられた。あたしは欲張って一番大きい袋をもらった。(フルーツ大好き!)パイナップルやパパイヤやメロンやグレープフルーツが寝不足で疲れた体にずっしりと重い重い。いやまじに横須賀から吉祥寺までたどり着けないかもと思うくらい重くて、うんうん言いながら大変な思いをして持って帰った。でもなんか、エレベーターに乗ってあっという間にあんなかさかさの骨になってしまったおじいちゃんがあたしにはとっても納得がいかなかったから、その果物の重みがとっても愛おしかった。