渋谷に着くと
空の闇ががうっすら溶けはじめている
青信号と薄闇のブルース
トンネルの出口で
蛍光灯に照らされた寒色系の世界を
ポケットに手を突っ込んでつかつか歩く

たった一日で消えたなにか
更地にかつてなにがあったのか
毎日通っているのにさっぱり思い出せない
行ったことのない公園
のぞいたことのない美術館
世界をどれだけ
知っているのか いないのか

もうすぐ太陽が
巨大な暖色系を持ってやってくる
黄色いイチョウが予告している
鳥もそうだよとうたってる
あたしもうたいながら歩く歩く
あたたまった手をポケットから出し顔にふれると
冷たくて気持ちがいいくらいだ